追跡について。

今日はさっきまで少し外出をしており
そのために普段あまり使わない電車に乗っていた。
日曜日の夜であり、市内に向かう人は少なく、電車の中は結構がらんとしていた。


おれは適当に腰を下ろして病理学の教科書なんぞを読みふけっていたのだが
ふと左前方に何やら雰囲気を感じてはっと顔を上げた。

どこかで見た顔だ。
っていうか、「やつ」だ。

だがてめえの視力も悪い事もあり、「幻だろう」と片付けてしまう事にした。
こんな時間に「やつ」が市内に向かっているなんてことはありえない。
それに、似たような風貌の人間もいないわけでもないだろうし。

む?

もしや、てめえの下宿に向かっているのではないだろうな・・・。



しばらくすると、電車は乗り換えの駅のホームに滑り込んだ。
ここで自分は降りなければならないが、それよりも
「やつ」らしき人物の挙動が気になった。

ここで降りる、という事があれば、先ほどの予感が当たる確率が非常に高くなる。


電車の扉が開く。

やはり「やつ」は電車を降りた。


間違いない!
「やつ」だ!

てめえの下宿に向かっているのだ!
そして連絡はもらっていない!

いつもの「やつ」のやりかただ!


しかもあさってテストなので長期居座られると・・・。



おれは「やつ」を追った。
なんて偶然だ。

「やつ」は階段をなぜか小走りで駆け登っていく。
こっちも追うのだが熱く抱擁しているカップルなどが
壁となって思うように先に進めない。

そうしている間に「やつ」は改札口を抜け、乗り換え先に向かっている。
おれは必死に追いかけたが、切符を買っている間に「やつ」を見失ってしまった。
「やつ」はあらかじめ乗り換え用の切符を持っていたのだろう、改札口を抜けていった。


急いで切符を買い、ホームに向かう。
急行が発車しようとしていた。

「やつ」がてめえの下宿に向かっているのならば
間違いなくこの急行に乗っている。
急いで階段を降り、扉が閉まろうとする直前に電車に飛び乗った。

車両を見回してみるが、「やつ」は乗っていない。
そのまま先頭の車両まで移動してみたが、やはり姿は見当たらない。

幻だったのだろうか。

ここのところ体調がすぐれなかったせいかもしれない。
もしくは勉強のしすぎかもしれない。

念のために後ろの車両まで再び移動するが、やはり「やつ」はいなかった。



ふむ。不思議だ。

今日は更新をせずに素直に家に帰ろうと思っていたのだが
あまりに不思議だったのでなんとなく更新してみた。


幻だったかどうか、は下宿に帰ってみるとはっきりするのだが・・・。



続く。
多分。


っていうか、家の前で待ってたりして。
近所に不審がられる前に帰ります。ドロン。