一流の医者について。

先日、学食で遅い夕食を取っていると、ばったり友人と出くわした。
そして二人で食事をすることになったのだが、そこでおれは彼の叫びを聞いた。
学校に対する不満である。

曰く、基礎医学の講義を受けているときはマニアックな講義を
されても彼らは研究者だから別にいいと思っていた。
しかし、臨床の講義で同じ事をされたのでは困る、と。

医者を育てるような講義をしてほしい、というのだ。



全くその通りだ。

もちろん、中には「医者を育てる」という目的を明確にしている
講義もあるのだが、他方で学生が誰も理解できないような講義をする教科もある。


さらに彼は吠えた。


講義に来ている学生というのは、基本的に出来るやつらが多い。
つまり、学年でもトップクラスの学生のはずだ。
その連中が理解できないということは、異常だ、と。


そう言えばその日の彼は荒れていた。
講義の最中も質問を繰り返し、納得できなかった彼は教官の前で
「こんなくそ講義、受ける意味ねえんだよ!」と言い放った。

もちろんそれだけでは建設的だとは言えない。
なので、教官に、具体的に問題点を指摘したメールを送るという。


だから力を貸してくれ、と彼は言った。
てめえに貸せる力ならいつでも貸すぞ、とおれは言った。

それからしばらく二人でいろんなことを話した。
本当に力を貸せたのかどうかは大いに疑問が残るところだが。



だって一流の医者になりたいでしょ? 
そう思いません? 

医学の勉強は医者になってから、とか、学生のうちは
勉強よりも遊べとか、そういうの嫌いなんですよ。そう彼は言った。


全くその通りである。
医学部にいて、いろんな学生を見てきたが、抑圧された人生を
送ってきたやつほど簡単にそういった言葉に乗ってはじけてしまう。
まあ、プロボクサーになるくらいはじけてくれたら気持ちがいいのだが、なんせ半端だ。
こういった連中は見ていてかわいそうになってくるくらいだ。

何がかわいそうかというと、そういうことをしつこくサークルの
先輩などから吹き込まれるから、それこそ常識だと勘違いしてしまう輩がいる、ということだ。



それ以上は今日は突っ込まないが、一流の医者、という言葉に少し惹かれた。
てめえの目指している方向と彼の言葉がリンクしたのかもしれん。
まあ一流とはいったい何を指すのか、と言う疑問もないことはないが。



その後、彼は本当に教授にメールを送ったらしい。
っていうか、そのメールを彼に見せてもらった。


一流の医者。一流の医学者じゃなくって、ね。
そこがツボだったかも知れん。